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日本語教師養成講座

外来語(餃子とコーヒー)の面白さを調査:日本語教師養成講座から

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50歳になった2020年にセカンドライフを考えていこうと思い、2021年1月から日本語教師養成講座に通いはじめました。この記事では講座の復習をかねて、とくに面白かったトピックについてネットや文献を調査したことを記事にしています。日本語教員資格の取得をめざしている方や語学教育に関心のある方と繋がれれば良いなぁと思っています。

先日の復習

語彙論

語彙とは

語ではなく、特定の基準や範囲から単語を集めたまとまり。理解語彙と使用語彙の2種に分かれます。

  • 理解語彙…聞いて理解できる語彙。ニュースや専門分野で出てきますが、日常ではあまり使いません。
  • 使用語彙…日常的に頻繁に使い、書いたり聴いたりしやす語彙です。

外国語教育の初歩段階では使用語彙を丁寧に教えることが大切です。

語彙量

外国語教育において、どんな言葉(重要語)を選んで学生に教えるかは大切なことです。重要語の選択の指針となるのが語彙量です。

語彙量とは、各言語のなかで語彙が使われている数量のことです。語彙量を量るための基準が2つあります。

  • 異なり語数…同じ語が繰り返し使われても1個と判断。語彙量調査先の資料全体で異なる語がいくつあるかを算定します。
  • 延べ語数…同じ後が繰り返し使われても別個と判断。語彙量調査先の資料全体であらゆる語彙がいくつあるかを算定します。

異なり語数と延べ語数はズレます。延べ語数が多い言語は同一語彙が多く使われることになります。この頻度は累積利用とも換言でき、この使用率から言語の特徴を見ることができます。たとえば、延べ語数が多く、異なり語数が少ない言語は言語学習のしやすい特徴があります。

各言語の異なり語数を述べ語数で割った数値は累積利用率(またはカバー率)といいます。よく「語のカバー率」や「語数とカバー率」といった用語で使われます。

語のカバー率にもとづいた語彙調査

語のカバー率にもとづいた語彙調査は、数十年間の蓄積があります。代表的な調査結果は、英語・フランス語・スペイン語・中国語・朝鮮語・日本語のカバー率を比較したものです。

頻繁に使われるこの比較結果は、最近(といっても20年ほど前の研究ですが)では次の文献に掲載されています。

佐藤政光「日本語学習者の語彙習得に関する調査研究―(1)基本語彙の問題点について―」『明治大学人文科学研究所紀要』第44冊、1999年、171頁。

調査結果はこの論文をご覧ください。PDFでダウンロード可能です。

この論文には上述結果の典拠資料も記されています。

  • 水谷静夫『朝倉日本語新講座2語彙』朝倉書店、1983年
  • 水谷信子『日本語教育概論』放送大学教育振興会、1997年

語のカバー率調査による上位語の特徴と日本語の特徴

語のカバー率調査による各言語の特徴のうち、各言語にまたがるカバー率上位語の特徴は次のとおりです。

  • 語形が短い
  • 意味の範囲が広い
  • 他の語と結びついて使われる語彙が多い

英語では「do」辺りかと思われます。

日本語の事例としては「する」が挙げられます。たとえば、「勉強する」「これにする」「変な味がする」「音がする」「100万円もする」「5000円はする」などです。

語のカバー率調査による日本語の特徴は次のようにまとめられます。

  • 1万語知っていれば雑誌記事の9割を読める
  • 使用率上位の語の占める割合は、フランス語や英語などより約20%低い(語のカバー率が低い)

基本語彙と基礎語彙

日本語学習者向けの区分として、語彙を次のように分ける場合もあります。

  • 基本語彙…客観的に語彙調査をして、頻度の高い語を集める。
  • 基礎語彙…これだけ知っていたら生活できる日常語を集める。

語種

語種とは語彙を出自で分類したものです。

まず、単語は単一語と複合語に分かれます。複合語は単一語が2つ以上くっついたもので混種語。

単一語は次のように細分化されます。

  • 固有語…和語
  • 外来語…漢語(中国出自)、外来語(中国以外出自で約8割が英語出自)

次に単一語をそれぞれ詳しくみていきます。

和語

和語には2つの意味があります。広義の日本語、および漢語・外来語に対する日本語です。日本語教育を念頭においた和語は、漢語・外来語に対する日本語のことです。

和語の例は「わたし」「家」「たべる」「大きい」「小さい」など。

和語の特徴は次のとおりです。

  • 平仮名か訓読み漢字で表記
  • 日本語として基本的な語で、使用頻度が高い
  • 抽象的な意味が少ない
  • 濁音やラ行音で始まるものが少ない
  • 1語が多様な意味をもつ(「個性のない単語」といわれる)

漢語

漢語は漢字音で読み、字音語ともいいます。明代までの中国から来た言葉。たとえば「学校」「駅」「時間」「生活」「希望」など。

なお、近代中国から来た言葉は外来語に区分されます。

日本語教育の観点からみた漢語の特徴は次のとおりです。

  • 語数は多いが、使用頻度は少ない
  • 意味を限定するものが多く、複雑な類義関係をもつ
  • 造語力が強い(とくに複合語と接辞)

漢語は日本語を構成するうえで2つの作用がありました。和製漢語と翻訳漢語です。

和製漢語・和製熟語

1つは和製漢語・和製熟語といって、中世以降に生じた現象で、和語が音読みに転化したもの。細かく分けるとキリがありませんが、中国漢字が日本で語形変化や発音変化したものと理解するのが無難です。

和製漢語にはいろんな語彙があります。たとえば、火事(火の事)、立腹(腹が立つ)、残念(念が残る)、心配(心を配る)、日当(1日の手当て)、大根(おおね)など。

翻訳漢語

2つに、西洋から入った概念を漢語で表現したもの。たとえば、会社(公司)、哲学、鉄道(鉄路)、電話(电话)。

西洋と日本との交流は近代に入り深まります。近代以降の日本では欧米語が多く使われるようになったわけですが、そのうち、翻訳した欧米語と翻訳しなかった欧米語に分かれます。翻訳した欧米語は漢語で表現したので、これを翻訳漢語というわけです。

外来語

外来語とは外国語を自国語に採りいれた語のことで、借用語ともいわれます。日本語教育を念頭においた外来語とは、近代・現代に日本語に取り入れられた語です。中国から採りいれた語のうち、近現代のものは、こちらの外来語に区分して、漢語とは違うという認識になります(麻雀・マージャン、餃子・ギョーザなどは漢語ではなく外来語です)。

外来語の特徴は次のとおりです。

  • 主にカタカナで表記する
  • 語感の特徴に専門性や近代性があり、日本人によってはスマートさも感じる場合が多い
  • 発音は、子音を音節化して採り入れる。そのため長大な語形になり、短縮することが多い
  • 意味は特殊化して採り入れる

外来語の出自地域(由来国)には次のような特徴があります。

  • 梵語・古代インド語・サンスクリット語…仏典とともに伝来。ふつう「漢語」として意識。
  • アイヌ語…文字資料が残存しないため推測の域を出ないが、東北日本の先住民の言葉。
  • 古代朝鮮語…古代から朝鮮と日本は交流が深く、言語の類似性が強い。
  • ポルトガル語…中世末期(戦国時代末期)に宣教師らがもたらした文物に多い。
  • オランダ語…江戸時代に西洋唯一の交易国だったことから当時の商品名が多い。
  • 英語…近代以降、あらゆる分野の語彙に多大な影響。日本語の外来語のうち約8割を占める。
  • フランス語…芸術・服飾・料理などの分野の語彙に多い。
  • ドイツ語…医学・工学・哲学などの分野の語彙に多い。
  • ロシア語…社会主義関連の語彙が多い。
  • イタリア語…オペラをはじめとする音楽用語に多い。
  • その他

混種語

混種語とは、和語・漢語・外来語の複合語のことです。パターンは4つあります。

  1. 和語+漢語または漢語+和語…前者には、大道具、流し台、手製、後者には駅前、気持ち。
  2. 和語+外来語または外来語+和語…前者には、消しゴム、生ビール、光ファイバー。後者には、パン種、オレンジ色、カード払い。
  3. 漢語+外来語または外来語+漢語…前者には、電子レンジ、太陽エネルギー、和風サラダ。後者には、ビール瓶、カップ麺、データ入力。
  4. 外来語+外来語…いわゆる和製英語。たとえば、ガソリン・スタンド、カレー・パン、サービス・ランチ。

2番と3番の区別が難しいです。

1番のうち、漢語+和語は重箱読みともいわれるもので、日本語学習者には難しい点の一つ。

外来語(餃子とコーヒー)の面白さを調査

日本語教員養成講座から語彙論から外来語の面白さを調査しました。今回の語彙論を復習して、とくに面白いと思った語種は外来語です。なかでも、出自の複雑なギョーザ(餃子)とコーヒー(珈琲)には興味津々。

そこで、これら二つの言葉を語彙論の角度から調べてみました。

ギョーザ(餃子)

ギョーザは語彙論において外来語に区分されます。近現代に中国などの外国から入ってきた言葉だという認識にもとづいています。

現物のギョーザの普及

ギョーザは中華料理の一種で、中国から日本へ伝来した食べ物です。日本の民衆に普及したのは1945年の終戦がきっかけです。中国東北部の満洲地域にいた日本人が帰国しはじめて、日本で広めていきました(詳しくは「餃子の歴史 | 豆知識 | 餃子情報館 | モランボン 手作り餃子サイト」をご覧ください)。

中国語では「饺子」と標記し、日本語で読むと「こうし」。

ギョーザは中国の東北部でよく食べられています。それで中国語のギョーザの発音に近いと思われがちです。しかし、実際は「Jiǎozi」と発音します。カタカナでは「チャオツ」くらいの発音になり、ギョーザの読みとは大きく異なります。

言葉・発音のギョーザの由来

ギョーザの発音は、中国東北部の方言か朝鮮語が由来だと考えられます。

一説には、山東省の発音「ギァオヅ」を由来とします(餃は飴!?今日は「漢字の日」です。皆様の今年の漢字はなんでしたか♪ | 餃子工房RONブログ)。

別の説には朝鮮語を由来とします。現代朝鮮語では「ギョジャ」、そして、中国側の朝鮮国国境付近で「ジャ」は「ザ」と発音する傾向があり、「ギョザ」と言われるそうです。このような経緯から、遼寧省・吉林省地域の中国朝鮮族の発音が由来かと考えられそうです。この点は「「餃子」は日本語で「ぎょうざ」と読みます。しかし中国語ではぎょうざの事を「ヂ… – Yahoo!知恵袋」で丁寧に書かれているので、あわせてご覧ください。

コーヒー(珈琲)

餃子では現物と言葉の違いをもとに、いろいろ調べました。コーヒーも同じように調べていきます。

現物としてのコーヒー

現物としてのコーヒーの由来は次のようにいわれています。

日本へ伝来したのち、コーヒーは外国人居留地で医薬として応用され、17世紀には長崎の娼婦が興奮剤として使用したことにより広まっていった。https://goodcoffee.me/column/interview/history-of-coffee-in-japan/

コーヒーは外国人居留地(長崎の出島)において普及した程度に留まったようです。

上述ページでは喫茶店とコーヒーが結びついたのは1888年のこと。1907年には日本とブラジルとの間でブラジル産コーヒーをはじめとする日ブ貿易活性化の条約が締結されたことから、ブラジルへの日本人移民が急増します。

言葉・発音のコーヒーの由来

コーヒーは外来語の一つです。江戸時代にオランダから現物とともに入ってきました。コーヒーは「COFFEE」の音写と思われがちですが、日本に直接関係した経緯としてはオランダ語が重要です。

漢字の「珈琲」はオランダ語の発音に基づく当て字である。https://goodcoffee.me/column/interview/history-of-coffee-in-japan/

オランダ語から珈琲という当て字も作ったことになります。オランダ語でコーヒーは「KOFFIE」と表記し、「コフィー」または「コッフィー」と発音します。

ちなみに、最近とても流行っているカフェ巡りの「カフェ」はフランス語(café)やイタリア語(caffè)。私の推測ですが、近世のオランダの覇権に対する文化的抵抗や自国文化の工夫がフランスやイタリアなどの周辺諸国で活発化したのだと思います。現物のコーヒーではオランダにかなわないから、コーヒーを店内や店外で飲む習慣を文化的に推進したのかと…。

そこで、フランスやイタリアを度外視してオランダを直視すると、「では、オランダ語と英語の関係は?」という疑問が出てきます。かつて建国前のアメリカ合衆国の一部は、オランダの植民地でした。オランダから現物コーヒーが持ち込まれて、KOFFIEがCOFFIEとなったのか…。

調べてみるもんですね。

建国前のアメリカ(合衆国)上流階級では紅茶が日常的な飲料でした。そして、

ニューヨークがオランダ領だった時代(1624〜1664年)にコーヒーがオランダから輸入された可能性がある…http://coffee.ajca.or.jp/webmagazine/wonderland/book/87trivia

その後にオランダの衰退とともにイギリスが主な宗主国となったアメリカでは、継続して紅茶を愛飲したそうです。コーヒーは副次的な位置のようです。

ところが、独立戦争のときに反英(対イギリス)の動きからコーヒーが主流になっていきます(詳しくはこちら)。すると、国産コーヒーを作る前にオランダ産コーヒーが存在した事実が重要になってきます。以上の経緯をふまえると、COFFIEはKOFFIEが語源となりそうです。

おわりに

コーヒーに関する記事はこちらこちらを参考にしました。分かりやすく説明されているので、ぜひご覧ください。

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